Condo London 2026

Hosted by Arcadia Missa, London

松下 和暉

熊の肛門はまるでX'masの飾り
2026.1.17(土)-2.14(土)

プレスリリース

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Bear's anus like a X'mas ornament, matrix men sees UK solar banana 2026, marker and oil on canvas, 162 x 130.3 cm

松下和暉は、言葉が意味として理解される前の段階――文字の形、配置、反転、分断といった構造そのものに強い関心を寄せています。本の中や身の回りのふとした言葉をきっかけに、イメージが自動的に展開され、作品はその最初の運動から立ち上がります。そこでは意味は排除されるのではなく、文字の形態や音、空間的な配置と同列に置かれ、同じ強度をもった要素として扱われます。言葉はアナグラムという操作を通じて再構成され、絵画へと接続されます。松下の絵画は、こうして生成された言葉の延長として機能し、色、形、ストローク、空白を通して言葉の再定義が抽象的に行われます。キャンバス上の要素は、読む/見るという行為の境界を揺らし、空白は知覚が立ち止まるための余地として働きます。私的なメモと絵画、タイトルとモチーフのあいだで交わされる親密な対話は、言語と視覚芸術の境界に緊張を生み出し、そのずれや揺らぎが作品の内部で持続していきます。

本展において松下は、これまで一貫して取り組んできた、言語が持つ物理的側面と、その配置や反転によって生じる知覚の揺らぎを、より身体的・環境的な領域へと拡張しています。日本における熊の市街地への侵入や、クリスマスという祝祭的な空気が参照され、本展のタイトル Bear’s anus like a X’mas ornament は、そうした状況の中で立ち上がったイメージを示しています。熊という具体的で暴力的な存在、X’mas ornament に象徴される装飾的で無害化された祝祭性、そして身体の開口部としての anus は、いずれも比喩として回収されることなく並置されます。日本における熊の増加とそれに伴う駆除は、保護と暴力、主体と客体といった関係を不可避的に露呈させますが、松下が関心を寄せているのは、その是非ではなく、関係そのものがどのような構造のもとで成立しているかという点です。彼にとって言葉とは、何かを排除するための手段ではなく、両者の距離や見え方を変質させるための道具として機能しているのです。

身体はあらかじめ固定された実体ではなく、道具=言語を介してはじめて具体化される潜在性として捉えられ、絵画は拾い集められた言葉や情報、個人的な欲望が編み込まれ、意味と形態が同時に生成と崩壊を繰り返す場として立ち現れます。松下の作品は、理解や合意へと収束することなく、構造が運動し続ける状態そのものを提示しているのです。松下の作品に込められた柔軟なユーモアは、言葉の意味や公正さにがんじがらめになってしまいがちな私たちを、ガチガチに固くなってしまった身体から解放してくれる契機になるのではないでしょうか。

ある日、私は日本における熊の市街地への侵入が深刻さを増しているという新聞の記事と出会う。その記事は編集作業中のD¹ の山の中から発見された。生まれたときから市街地への抵抗が少ないアーバンベア 2 世と呼ばれる個体の増加と、それに対処する人間の組織的な取り組みが描かれていた。熊の行動とそれ自身に伴う緊張は、鏡に映るニキビのように緊迫した真実に感じられ、隠れていた各臓器を強張らせていく。そうした経験のレンズが私自身の内面化された環境を不自然なほど耿耿とした光に変え、一週間、一ヶ月、一年を通して X’mas の夜に反射しています。

¹ 新聞のクリッピングの際に使用する防衛省の簡略コード

  1. Bear’s anus like a X’mas ornament, matrix men sees UK solar banana
    bears anus like a xmas ornament / matrix men sees uk solar banana
  2. Our nut (deadly little growing), it turned into a dull grey glow
    our nut deadly little growing / it turned into a dull grey glow
  3. Us X’mas ornaments smell fishy, mesmerism sax fons (antsy hull)
    us xmas ornaments smell fishy / mesmerism sax fons antsy hull
  4. Untitled
  5. Untitled

— 松下 和暉

松下 和暉(まつした・かずき)

1992年東京都生まれ、在住。
主な展覧会に、個展「熊の肛門はまるでX'masの飾り」Condo London hosted by Arcadia Missa(ロンドン、2026)、「POSTALES」Galerie Gato(リマ、2025)、個展「Intoxication view」KAYOKOYUKI(東京、2024)、「No sleeper seats, that’s a mattress」Cherry Hill(ケルン、2024)、個展「The Agentur」ECHO(ケルン、2023)、「Tokio Hotel presented by galerie tenko presents」(ベルリン、2023)、「OBSESSION II」WSCHÓD(ワルシャワ、2023)、個展「Ice like Ice」im labor(東京、2022)、個展「X’mas」im labor(東京、2020)、グループ展 「温泉大作戦」KAYOKOYUKI(東京、2022)、グループ展「ignore your perspective 52 思考のリアル」児玉画廊(東京、2019)、グループ展「Group Show」4649(東京、2018)など。