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Elsewhen, Elsewhere
2025.7.12(土)-8.29(金)11:00-18:00
定休日:土・日・祝祭日
オープニングレセプション:7.12(土)15:00-18:00
会場:Art Intelligence Global
Suite A, 1st Floor TS Tower, 43 Heung Yip Rd
Wong Chuk Hang, Hong Kong
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大野 綾子 植物と花(その香り) / Plants or flowers (its scent) 2022
granite, steel, magnet, 35.5 x 35.4 x 16 cm(台:44 x 24 x 17 cm)
Elsewhen, Elsewhere
“What is the meaning of life? That was all—a simple question... The great revelation had never come. Instead there were little daily miracles, illuminations, matches struck unexpectedly in the dark.”
「人生の意味とは何なのか?——ただそれだけのこと。実に単純な問題だ。だが年をとるにつれて、切実に迫り来る疑問でもあった。大きな啓示が訪れたことは決してないし、たぶんこれからもないだろう。その代わりに、ささやかな日常の奇跡や目覚め、暗がりで不意にともされるマッチの火にも似た経験ならあった。」
ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』(1927)
私たちが生きている「今」「ここ」は、本当に唯一の時間と場所なのでしょうか?
ふとした瞬間に、目の前の風景がどこか違って見えることがあります。朝の光、毎日の食卓、道行く人の気配。いつもと同じはずの光景が、なぜか少しだけ遠くに感じられたり、逆に忘れていた何かを思い出させたりする、そんな経験は誰にでもあるはずです。
本展のタイトル「Elsewhen, Elsewhere」は、11人のアーティストたちの想像力によって立ち現れる「別のとき」「別の場所」の存在を示唆しています。それは過去かもしれないし、未来かもしれません。あるいは、現実とは別の層に存在する“いま”かもしれません。私たちが慣れ親しんでいるはずの日々の風景は、ときに過去・現在・未来の境界が曖昧になり、別の物語や感情、可能性を内包したものとして姿を表します。
参加する11人のアーティストは、絵画、彫刻、写真など多様なメディアを用い、それぞれの方法で「Elsewhen, Elsewhere」への入口を作り出します。彼らが扱うのは決して壮大な物語や空想世界ではなく、私たちの足元にある「日常」です。それぞれが見つめるのは、ふとした瞬間に立ち現れる“もうひとつの現実”であり、個人的な記憶、身の回りある当たり前のもの、風景、気配から、異なる時間の流れや異なる場所を想起させる作品が生み出されます。
たとえば、記憶のなかの風景を再構成した作品は、私たちが忘れていた感情を呼び起こすかもしれません。あるいは、見慣れた日用品に些細な仕掛けが施された作品は、私たちにわずかな違和感を抱かせるでしょう。そのような作品群は、私たちが当然のように捉えている「時間」や「場所」の感覚に、そっと揺さぶりをかけてくるのです。
「Elsewhen, Elsewhere」という場所へ足を踏み入れたとき、そこには何が見えるでしょうか。ギャラリー空間を歩きながら、私たちはいつの間にか「今・ここ」から離れ、アーティストが示す「かもしれない世界」を渡り歩いていきます。それは決して遠い場所ではありません。むしろ、私たちのすぐ隣にあるもうひとつの日常、すでに私たちの中に存在している時間です。
この展覧会を通じて、見慣れた日常の裂け目から、まだ言葉にならない感覚や気配を感じ取っていただければ幸いです。日常の向こう側に広がるあなただけの風景が見つけられますように。