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2023.10.28 (土) - 12.9(土)
*12.11(月)から16(土)までアポイントメント制で開廊いたします。
ART WEEK TOKYO 2023
11.2 (木) - 5 (日) 10:00 - 18:00
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協力:杉戸 洋
このたびKAYOKOYUKIでは、櫃田伸也の個展「 」を開催いたします。本展では、1990年代以降のペインティング、ドローイング作品に加え、愛知県立芸術大学から東京藝術大学へと引き継がれ研究室で使用されていた作業板に、今回新たに手を加えた作品を展示いたします。
櫃田は、山や池、空き地、ブロック壁、金網、潰れた空缶、草花などの身近な風景を、斜線や直線、円形、三角形、矩形といった幾何学的な形態、そして鮮やかで深みのある色彩を用いて再構成し、遠景と近景を圧縮させた独自の空間を作り出します。そこにはごく日常的な風景が映し出されます。しかしそれは、過去と現在が交差し絶え間なく流転するようななんとも不思議な風景でもあるのです。
1941年東京都大田区に生まれ、戦後のまだ地面の土が露出したままの東京で少年時代を送った櫃田は、よく多摩川の土手に上がって、そこから見える景色を眺めて過ごしていたといいます。(*1)台風や洪水によってがらりと変わる多摩川の表情、そして高度成長期に伴って変化していく東京の景色を眺め続けたことは、櫃田の絵画の原風景をなしています。また櫃田は、古今東西の美術作品はもちろん、映画や演劇、建築などを熱心に見て吸収していきました。街を歩き回って「見ること」を積み重ねた経験が、豊かな風景を構築する素地となったといえるでしょう。
本展覧会のタイトルである「 」からは、仙崖による禅画(「 」)が想起されます。しかしここでは、その宗教的/象徴的な意味合いよりもむしろ、もっと直接的に形態としての 、 、 という意味合いが強いのではないかと思われます。本展の出品作品に共通する円形のイメージは、池や水たまり、あるいは空き地などの景色が変成していくように描き出されます。円形、三角形、矩形といった幾何学的な形態が配置された画面には消失点は存在せず、斜線や直線の連なりは画面に揺らぎを表出させます。わたしたちの視点は固定されず、視線は中心から上下左右斜めへと漂い、映し出された風景そのものが揺らいでいくのです。
過去現在、あちらこちらの風景の断片を寄り集めることによって立ち上がる「生き物のように姿を変えながらゆったりとそこにある」(*2)風景。それは、櫃田が「通り過ぎた風景」であると同時に、わたしたちが「通り過ぎた風景」なのではないでしょうか。
(*1)小西信之「櫃田伸也―風景の導くままに」(『放課後のはらっぱー櫃田伸也とその教え子たち』あいちトリエンナーレ実行委員会、2009年)
(*2)櫃田伸也「通り過ぎた風景」(『櫃田伸也:通り過ぎた風景』東京藝術大学出版会、2008年)
櫃田伸也は1941年 東京都大田区に生まれる。愛知県在住。 1964年に東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業、1966年に東京藝術大学美術学部大学院を修了。同大学にて 非常勤助手、デザイナーとしてNHK美術部にてデザイナーとして勤務した後、1975年より愛知県立芸術大学美術学部絵 画科油画科、2001年より東京藝術大学美術学部絵画科油画にて教鞭を執る('09まで)。
名古屋市芸術奨励賞(1984)、第28回安井賞(1985)、損保ジャパン東郷青児美術館大賞(2011)などを受賞し、国内外の個展やグループ展で作品を発表している。また代表作の多くが東京国立近代美術、東京都現代美術館、文化庁、豊田市美術館、東京藝術大学、愛知県美術館、名古屋市美術館、豊橋市美術博物館、愛知県立芸術大学、栃木県立美術館、岐阜県美術館、浜松市美術館、都城市美術館、刈谷市美術館、諏訪市美術館などのパブリックコレクションに収蔵されている。
2009年には、愛知県美術館と名古屋市美術館の2館で「放課後のはらっぱ櫃田伸也とその教え子たち」が開催され、画家として、また教育者としての櫃田のこれまでの軌跡を、自身と当時の学生であった奈良美智、杉戸洋、森北伸など19名の作品を通して紹介された。