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quiz
2016.12.17 (土) - 2017.1.29 (日)
オープニングレセプション:12.17 (土) 18:00 - 20:00
冬季休廊:12/26 - 1/10
富田正宣はこれまで一貫して油絵具を用い、抽象とも具象ともいえる絵画作品を制作してきました。一見すると抽象画に思えるような幾重にも塗り重ねられた油絵具の積層からは、人の姿や手など、具体的なイメージが徐々に浮かび上がってきます。富田は自分の目の前で実際に起こっている現象や、現実に存在している風景を抽出し、絵画として成立させようとしているのだと言います。富田の絵画の特筆すべき点のひとつとしてその色彩が挙げられますが、不協和音の調和ともいうべき色彩を重ねることで生み出される作品の数々は、私たちが普段目にしている現実の世界と対を成すもうひとつの世界を浮かび上がらせています。それは、星と星との間に線を想像することで見えてくる星空の奥の様々な図像や、形式化された現実には存在しない風景を描くことで深淵を表現している中国の山水画などと通底するものであるといえるでしょう。
本展覧会のタイトル「quiz」は出展作品の中のひとつの作品名でもあります。作家の説明によれば、この作品名は問題やなぞなぞという意味を表しているのではなく「quiz」というローマ字のシルエットが重要であるとのこと。興味深いことに、このことは「quiz」という言葉の語源の一説にも不思議と関連しています。その説というのは、一晩で新しい言葉を作り流行らせることができるかという賭けをしたというものであり、「quiz」という言葉自体は何の意味も持たないのです。完成した作品に名前をつけるという行為を、富田は「名前に名前をつける」行為であると言います。それは、歴然とそこに存在しているものに名前をつけることによって存在そのものに記号を付与し新しい価値を見出すことであり「業が深くて楽しい」行為であるのです。
私たちが富田の絵画に対峙するとき、幾重にも塗り重ねられた油絵具によって生じている物質としての存在感に圧倒されます。しかし、その強固な物質性とは対照的に絵具の積層から浮かび上がるイメージは儚く虚ろで、次の瞬間にはもう違うものへと変化していってしまうのではないかという錯覚を覚えることがあります。それは「立ったり倒れたりする直前」や「何かに向かっている」中途をどうにか描こうとする作家の絵画と真摯に向き合う姿勢が起因しています。鑑賞者は、現実の裏の裏、つまり実際とは異なる現実を体感できるのではないでしょうか。
富田 正宣(とみた・まさのり)は、1989年熊本県生まれ。2013年に東京藝術大学絵画科油画専攻卒業。主な展覧会に、個展「quiz」KAYOKOYUKI(東京、2016)、「Inner Flash」Space Wunderkammer(東京、2014)、「SLASH/ sqare」gallery 5(東京、2014)、「富田正宣/中園晃二展」ターナーギャラリー(東京、2012)、個展「ムトヅ2」ターナーギャラリー(東京、2012)など。千葉県在住。