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投射 projection
2016年6月25日(土) - 7月24日(日)
オープニングレセプション:4月25日(土)18:00-20:00
鬱蒼とした森の中を進む少女や田舎道を歩く青年や草むらに佇む人物、草原や浜辺が広がる後方に小さく見える人影。前方や後方に走っていく車、あるいは犬や鳥などの動物。西村有は、様々なイメージを用いながら、何か特別なものがあるというわけではないけれども記憶の奥底に刻まれた何気ない瞬間を切り取り、画面に描き出します。透明感のある淡い色彩を重ねることで生み出される作品の数々は、一編の詩集のように一つの共通する世界を成立させています。
本展のタイトル「投射」には、作家が画面に対する能動的な行為、つまり描くことで画面に投射するイメージに加えて、画面に描かれた像から作家が受動的に投射されるイメージという二重の意味が含まれています。「絵を描いていると、自分の後ろや横にもイメージが現れてくる」という西村の言葉が示すように、作家の記憶から発せられたイメージは、画面と作家自身を取り囲みながら徐々に変化していき、完成に向かっていくのです。西村の絵画の特筆すべき点の一つとして、ずらして描かれる人物の輪郭線や色面など、幾重にも重なる層によって成立していることが挙げられますが、この層は作家自身にも予測することのできないイメージの変化のプロセスを示しているといえます。
繊細な色彩と奔放な筆致によって描かれる西村の絵画に対峙するとき、誰もが子供の頃に持っていた自分だけの秘密の風景が呼び覚まされることがあります。また、ほんの少し目を離した隙にキャンバスに描かれた人物や動物が画面から消えてしまうのではないかという錯覚を覚えることもあります。それは、画面との交歓ともいえる西村の制作過程のために成立している絵画の自律性が、画面の内と外の世界をつなぐ役割を果たし、親密で繊細な絵画空間を生み出すことによって、鑑賞者の想像力を促す、豊かな表現を実現していることに起因するのではないでしょうか。
西村 有(にしむら・ゆう)は、1982年神奈川県生まれ。「FACE 2016 損保ジャパン美術賞 絵画のゆくえ(優秀賞)」損保ジャパン日本興亜美術館(東京、2016)、「project N 61」東京オペラシティーアートギャラリー(東京、2015)、「囚われ、脱獄、囚われ、脱獄 -竹崎和征キュレーション」KAYOKOYUKI、駒込倉庫(東京、2016)、「Some Like It Witty –宮津大輔コレクション」ギャラリーEXIT(香港、2014)、「富士吉田芸術倉びらき 2014」大野智史オープンスタジオ(山梨、2014)、「シェル美術賞 2013(保坂健二朗審査員奨励賞)」国立新美術館(東京、2013)、「TWS-Emerging 202 運ばれる景色」トーキョーワンダーサイト本郷(東京、2013)、「アーティストシリーズ Vol.65 西村有展」清須市はるひ美術館(愛知、2010)、「第6回はるひ絵画トリエンナーレ(奨励賞)」清須市はるひ美術館(愛知、2009)など。神奈川県在住。