大田黒 衣美 EMI OTAGURO

Artist bio

spot
2017.10.28 (土) - 11.26 (日)
オープニングレセプション:10.28 (土) 18:00 - 20:00

EMI OTAGURO

大田黒 衣美 EMI OTAGURO untitled 2017, marker pen on paper, 21 x 29.7cm

「狩人が狩りの合間に小便をしている。徐々に大きくなっていく尿の泉の中に自らの姿を見つける。彼は尿の泉の中の姿を覗きこむ。“私”を立たせているものの音がことごとく消失し、狩りの為のビートを刻んできた猟犬の息遣いでさえ、この時の狩人には聞こえていない。この後、彼はまた狩りに戻るのか、或いはそのまま自分の正体を覗く旅に出るのか…。」

 本展覧会「spot」は、ギリシャ神話の「ナルキッソス」に着想を得、大田黒自身が紡ぎ出した物語が核となった一連の作品で構成されています。尿の泉の中に自分の姿を見つけた狩人は、ふと自分の肉体の存在に対して不安を覚えます。それを確かめるように尿の泉を覗きこむと、その中に猫や馬、カラスなど、様々なイメージが浮かんでくるという状況を作品化したものです。ここで泉を成立させている尿は、生き物の肉体の内と外の境界であり、その中の自分そっくりの姿は狩人に肉体の存在認識を揺るがすものとして捉えられます。その不安を払拭するように、そして少しの好奇心を持って、狩人は尿の泉の中のもう一人の自分に接近しようとします。しかし彼は、求めていたはずの自分の姿の代わりに自分の記憶の断片のイメージを見出します。それらはまるで自身の存在を証明するものであるかのようにも捉えられます。

 大田黒は、これまでも日常に潜む説明しがたい出来事や、正気と狂気の狭間にあるような人間の精神の有り様をテーマに制作してきました。チューイングガムやウズラの卵の殻など、物語に合わせて選択された様々な素材は、個人が内包している未形で茫洋とした存在と外界とが通じる為の想像の受け皿として選択され、大田黒の絵画を解釈する上で重要な語り部の役割を果たしていました。本展では、手段と素材を限定した、より直接的な表現が試みられています。「絵を描くということは記憶に染みをつける行為」であると大田黒は言います。無限に続いている時間のなかから瞬間を切り取り、それを黒いマジックで塗りつぶすことによって記憶に印をつけていく。この行為、つまり「絵を描く」という原初的であり身体的な手段を繰り返すことで、肉体存在の不確実性や曖昧な自己認識に対峙し制作を続ける大田黒の最新作を、是非ともご高覧ください。

1980年福岡県生まれ。
「ALLOTMENT トラベルアワード2016」にて グランプリ受賞。「THE ECHO」高崎シティギャラリー(群馬 / 2016)、「project N 55」オペラシティ・アートギャラリー(東京 /2014)、「不知火の水まくら 企画:KAYOKOYUKI」青山|目黒 (東京 / 2013)、「TRICK-DIMENSION curation: 大庭大介」tolot:heuristic SHINONOME (東京 / 2013)、「四式 curation: O JUN」遊工房アートスペース(東京 / 2010)、「Mr FREEDOM X curation: 岩永忠すけ」南千住アプ リュス (東京 / 2009)、「アートアワードトー キョー 2008」丸の内行幸 地下ギャラリー (東京 / 2008) にてグランプリ受賞、「WORM HOLE episode3」magical, ARTROOM (東京 / 2006) など。
愛知県在住。

Emi Otaguro

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